PROFILE
副会長 常議員 公設事務所運営支援等委員会委員長
災害対策委員会・財務委員会・司法修習委員会各副委員長
綱紀委員会・弁護士業務妨害対策委員会各委員
日本弁護士連合会 常務理事、代議員
関東弁護士会連合会 副理事長
POLICIES
弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とし、「誰一人取り残さない」というSDGsの基本理念は、弁護士の活動のあるべき原点でもあります。ただ、弁護士・弁護士会の敷居はまだまだ高く、諸団体と連携しながら弁護士がアウトリーチを進めていく必要があります。
私は、2021年に実施された二弁主催の女性のための相談会に携わりました。その活動の中で、女性専用シェアハウスなどにチラシ配りをし、狭い1つの部屋を間仕切りして2世帯で利用していたり、DV被害で逃れた方のため郵便受けがなく、チラシをポストイン出来ないといった状況を目の当たりにし、社会から取り残された状況にある方が大勢いらっしゃることを知りました。また、本年の年始も含め、被災者支援のため能登に合計4回訪問し、被災者の自宅を訪問し、相談に対応する機会もありました。被災するずっと前から抱えた問題があり、玄関の内扉に10年前の弁護士会の法律相談のチラシが貼り付けてある家がありました。なかなか弁護士に相談できなかったとのことで、弁護士過疎の解消の必要性、そして弁護士が自ら困っている方にアプローチし、司法アクセスを改善していく重要性を実感しました。
上記2つの活動は、あらゆるニーズにワンストップで応えるため、弁護士会以外の諸団体と協力して行われたものでした。それぞれ特徴を有した活動を行い、飛躍的に物事を進めることができていたことを踏まえ、積極的に他機関との連携を図ります。
また、立憲主義を堅持し、法の支配を社会の隅々に行き渡らせることで、種々の人権問題や社会的課題を1つずつ解決し、公正で平和な社会の構築を目指します。今年度は、改めてその原点を確認し、誰も置き去りにしない社会の実現に向けて、二弁を全国の弁護士会のトップランナーにします。
阪神・淡路大震災から30年、そして能登半島地震から1年が経ちました。災害大国日本において、弁護士・弁護士会は被災者支援の活動を熱心に行っています。近年は毎年のように豪雨災害が発生し、南海トラフ地震や富士山噴火の可能性が指摘され、とりわけ、今後30年の間に首都直下地震が発生する確率は70%といわれています。能登に訪問した際も、建物は倒壊し、道路も凸凹で凄まじい自然の脅威を目の当たりにしました。
弁護士自身が被災者となっても、弁護士による被災者支援を可能とするために、防災意識の向上、備蓄の充実など防災力をアップさせます。また、弁護士会のBCPの不断の点検も実施します。
弁護士・弁護士を取り巻く環境は、世代・地域・ジェンダー・業務形態などによるギャップが生じています。
私が二弁副会長時代に立ち上げた10年未満の若手弁護士で構成されるNIBEN若手フォーラムは着実に実績を積み上げています。さらに体制を強化し、同フォーラムのさらなる会員増加や、若手会員に対して二弁の活動内容を届けるために同フォーラムを通じた広報活動、スタートアップ企業とのマッチングなどを通じた業務拡大に努めます。
また、弁護士会多摩支部は、420万人を超える市民の司法サービスを支えています。もっとも、多摩支部に加入するのは任意となっているため、多摩地域に事務所を構えるすべての弁護士が多摩支部会員ではありません。弁護士会多摩支部が一体となって地域司法の充実を果たし、さらに一層地域からの信頼に応えていくためにも、これまで積み残されてきた課題の解決に尽力します。
そして、これまで二弁が全国に先駆けて取り組んできた女性弁護士の活躍促進、柔軟な働き方の選択肢の拡大など、ギャップの解消のため多角的なアプローチを実行します。
上記3つの柱とともに、以下のテーマについても課題解決に向けて注力します。
二弁の会員数は6600名を超え、女性会員の比率は全国でもトップレベルです。また100人以上の大規模事務所に所属する会員や、企業内・官公庁で活動する会員が多数おられます。60期以降の若手会員も6割以上を占めます。多様な特性を有する会員が多くいるのが二弁の特色でもありますが、これら会員が充実した活動を進めることができるために、様々な意見に耳を傾け、会務に反映していきます。同時に、会務参加がしやすいように環境整備に努めます。
弁護士の重要な使命を遂行するために弁護士自治は不可欠であり、強固なものとしなければなりませんが、それは市民の弁護士・弁護士会に対する信頼に支えられるものです。会員に対しては、デジタル化の推進による委員会活動の活性化、研修の充実、弁護士業務妨害に対する対策を進め、一方、弁護士不祥事の未然の防止、非弁対策の強化などにより社会からの信用確保に努めます。
民事司法IT化は方向性が定まってきましたが、一方で裁判を受ける権利がないがしろにされていないかを不断に注視していく必要があります。刑事手続については、再審法改正、オンライン接見の実現、全過程の録音録画の対象事件の全件拡大、弁護人の取調べ立会権の確立など、いずれも喫緊の課題であり、全力で取り組みます。また、選択的夫婦別姓制度、そして同性婚制度の導入の実現に向けて弁護士会として推進します。
人権擁護を体現する弁護士の輩出は、今後の司法を魅力あるものとして必須の条件であるといえます。法曹養成に関する問題に対する取組にも力をいれ、いわゆる谷間世代に対する不平等・不公平な状況の解消も必要です。また、弁護士の業務拡大は、法の支配を社会の隅々までいきわたらせるためにも必要であり、注力します。そのため、社会に二弁の魅力を伝えることは、業務拡大の要因になるだけではなく、司法アクセスの向上、法曹志願者の増加にもつながるものであり、広報の充実に取り組みます。
以下、政策の詳細を記載します
01「誰一人取り残さない―――アウトリーチの促進」
新型コロナウイルス感染症の影響で、貧困や格差が急速に拡大し、経済大国であるといわれる日本であっても健康で文化的に営む生活が実現されていないという実態があります。非正規労働者(とりわけ女性非正規労働者)の休業の増加、激増した女性や子供・若者の自殺者数の高止まりも続いています。3つの柱でも述べたとおり、弁護士の力を必要とする、弁護士から見えない利用者に対してアウトリーチを強め、諸関係団体と連携しながら、生活に困難な人たちの権利救済を推進します。
インターネットなど情報技術の発達にともない、商品・サービスの提供が複雑化・巧妙化し、高齢者や障がいのある人、若年者など知識・経験等が不足している消費者が被害を受けやすい状況にあります。すべての消費者が安心して消費生活を送れるよう、法律や制度の整備のためのタイムリーな提言、市民に対する消費者教育の充実、消費者団体・福祉団体との連携を強化し、消費者保護の運動を展開します。
子どもは保護の客体ではなく、「権利の享有主体であり、行使主体である」(子どもの権利条約)という理念を社会の隅々に浸透させる必要があり、2023年4月にこども家庭庁が設立されました。子どもの尊厳を守り、「こどもまんなか社会」(こども大綱)を実現してまいります。
また、子どもの権利を守るため、子どもSNS相談やいじめ予防授業をはじめとする諸活動を継続して推進いたします。
また、2024年に成立した家族法改正では、離婚後共同親権が導入されるなど大きな改正がなされました。実務への多大な影響も予想されますが、子どもにとって最善の利益に適う解決が実現されるものとなるよう、関係機関との協議や研修などに取り組みます。
高齢者や障がい者が、平穏に安心して生活するため、積極的な支援を継続してまいります。本会は、他会に先駆けて設立された高齢者・障がい者総合支援センター「ゆとり~な」による各種相談、行政との連携による外部法律相談など、利用者へのアウトリーチを積極的に進め、自治体や外部団体との連携を強化しながら支援を進めております。引き続き、具体的支援のための活動を推進します。また、2022年の第二期成年後見制度利用促進基本計画に基づき進められている成年後見制度の見直しの議論は、国連障害者権利条約の理念と、本人の権利擁護の観点に基づいて進められるよう、実践的な提言を行っていきます。
犯罪被害者の置かれている状況を正しく理解し、関係者や報道機関、SNSなどによる二次被害を防いで犯罪被害者の尊厳を守ります。犯罪被害者の精神的被害及び経済的被害の回復、社会生活の再建に必要な支援を、関係機関と連携して、早期から継続して行います。そのために、検察庁・警視庁・法テラス・東京都等との連携を強化し、支援を拡充します。
個人がいかなる性的指向、性自認を有するかは個人の尊厳に関わるものであり、性的指向、性自認を理由とする差別は法の下の平等に反するものです。しかし、公的生活、教育、雇用・職場などの領域ではいまだに差別的取り扱いがなされており、性的少数者の人権を確立するためには多方面にわたる取組が必要です。本会は、LGBTに関する研修会等を積極的に行っておりますが、今後も啓発活動、相談体制の拡充に努めます。
2016年10月の日弁連人権擁護大会で「死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言」を採択されました。当会においても2021年3月に臨時総会で「死刑制度の廃止を求める決議」を採択しています。死刑制度を廃止する国は増加しており、OECD加盟国のうち、死刑を存置しているのは、アメリカ・韓国と日本だけです。袴田再審事件でも死刑確定事件で無罪判決が出されており、冤罪のもとに刑を執行してしまえば、取り返しがつきません。2024年11月13日の「日本の死刑制度について考える懇話会」報告書を踏まえて、国に対し、早急に公的な会議体を設置し、死刑制度に関する正確な情報や実態を公表した上で広く様々な人々の意見を聴き、国際的な情勢も踏まえながら、死刑制度の廃止に向けた立法措置を講ずることを求めてまいります。
地球温暖化が原因と言われる気候変動により、壊滅的な暴風雨による水害、深刻な干ばつなど、個人の生命・身体・財産に被害を与えるだけではなく、持続可能な社会の維持に深刻な影響を与えています。2024年10月の日弁連人権擁護大会では「人権保護として再生可能エネルギーを選択し、地球環境の保全と地域社会の持続的発展を目指す決議」がなされており、本会でも脱炭素への取組の紹介や、ペーパレス化、移動を伴わないオンライン利用を推進します。
弁護士・弁護士会は、警察その他関係諸機関と連携し、暴力団、半グレ、匿名・流動型犯罪グループその他反社会的勢力による市民や企業等の被害救済及びその発生の防止に努めます。とりわけ、反社的勢力の関与が認められる特殊詐欺事件は、一般市民に甚大な被害を生じさせております。2018年10月の日弁連人権擁護大会では「特殊詐欺を典型とする社会的弱者等を標的にした組織的犯罪に係る被害の防止及び回復並びに被害者支援の推進を目指す決議」を採択しましたが、引き続き同決議の実現に向けて尽力します。
1995年の阪神・淡路大震災からの30年間に、地震や津波、水害など数々の自然災害が日本を襲いました。とりわけ2011年の東日本大震災の後は、2016年の熊本地震災害や、2018年の西日本豪雨以降毎年全国各地で発生する豪雨災害、2024年の能登半島地震・奥能登豪雨災害、そして新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のまん延が発生し、災害の頻発化と被災態様の多様化・複雑化が著しく進行しています。
災害対応といえば、危機管理とか危機対応ということで括られてしまいがちですが、被災された方々は自然災害によってこれまでの生活が一変し、人間としての尊厳を保持した生活が送れないこととなり、これは人権の侵害にあたるという視点でみる必要があります。2023年、国は防災基本計画において「防災ケースマネージメントなどの被災者支援の仕組みの整備」を自治体の義務としました。災害ケースマネージメントとは、行政、弁護士をはじめとする専門士業及びNPO等が、被災された方お一人おひとりの状況と課題を具体的に把握した上で、相互に連携しながら、生活再建に向けた伴走型支援を行う取組みです。当会においても、発災時にオール二弁で災害ケースマネージメントに参画できるようにするべく、平常時から、行政や他士業との連携をさらに深化させるとともに、会内において、関連委員会がそれぞれの知見を結集させるための体制の構築や、被災者支援の知識・技術を備えた会員の拡充に取り組みます。
全国に存在する地裁の本庁及び支部のうち、その管轄地域に弁護士が0という地域は解消しましたが、2023年4月現在、弁護士が1という地域が2か所存在しております。弁護士に相談したくても出来ない利用者の存在を解消し、全ての人々に司法アクセスを提供するために、積極的な取組が必要です。東京フロンティア基金法律事務所は、全国に先駆けて最初の都市型公設事務所として設立された事務所であり、弁護士過疎地域のための地方赴任弁護士の養成と公益事件の受任を目的に、大きな実績を残しております。もっとも、当会の財政的負担をもって運営されており、財務的な観点から事務所経営を注視する必要もあります。
赴任弁護士の養成、アウトリーチ型相談の提案など、弁護士の耳に届かない声をキャッチして司法アクセス拡充を図り、今後も支援に努めたいと思います。
日本の人口減少に伴い、外国人労働者なくしては成り立たなくなっております。国境を越えた人の移動はさらに加速し、日本に在留する外国人もますます増加することが予想されます。2024年6月に人権侵害が相次いだ技能実習制度は廃止され、これに代わる育成就労制度が、多文化との共生する社会の構築のために、外国人の人権保障に適った制度にしていく必要があります。また、ヘイトスピーチの点では、日弁連が2023年4月に「人種等を理由とする差別的言動を禁止する法律の制定を求める意見書」を発出し、ヘイトスピーチの解消、外国人に対する偏見差別解消のために、同法律制定の取組を進める必要があります。
市民の司法アクセスを確保するために、都内各所(島しょ部も含む)で法律相談センターを設けているほか、自治体やそのほかの団体と連携して法律相談を実施しております。また全国に先駆けて設立された仲裁センターは、金融、医療など専門性の高い案件も簡易迅速に解決できるほか、住宅紛争に関して当会にも住宅紛争審査会が設置されて処理されております。弁護士費用保険も当初は交通事故の案件でしたが、対象範囲が拡大されております。弁護士費用保険は多くの方に平等にアクセスを提供するものです。いずれも市民の司法アクセスを容易にするもので、広く周知をして制度を拡大させ、名簿登載者のスキルアップのためにも研修等を充実します。
日本国憲法における立憲主義・恒久平和主義は、戦後日本の人権擁護と平和に極めて大きく貢献したものです。立憲主義は、権力の濫用を抑制するために憲法を制定したという考えであり、個人の尊重と法の支配の考えを中核とするものです。この立憲主義を脅かす事態については厳しく対峙しなければならず、権力に対して不断の監視を行う必要があります。
また、いわゆる安保法制についても、従前集団的自衛権の行使は認められないとしながら、これまでの専守防衛を超えた新たな場面に武力行使を認めるものであり、立憲主義に抵触するものであります。当会は、2014年以降、有楽町駅前で「憲法違反の安全保障法を廃止し、立憲主義の回復を求める街頭宣伝活動」を行っており、継続して市民に対して正確かつ理性的な議論を呼びかけます。
さらに、2018年3月、自民党は自衛隊の明記、緊急事態対応など4項目からなる「条文イメージ(たたき台素案)」を公表しましたが、日弁連は、2018年5月、自衛隊を明記する案は、専守防衛政策に変化を生じかねないなどの課題・問題があること及び国民投票法を見直すべきであるとの決議をしました。国民主権・恒久平和主義を堅持する立場からは、これらを後退させ、立憲主義を危うくする憲法改正論議については引き続き警鐘を鳴らしていきます。
2022年2月から始まったロシアのウクライナへの軍事侵攻、2023年10月以来のパレスチナ武装勢力とイスラエルの間の紛争は、今なお継続しており、女性、子どもを含む多くの市民が恐怖と欠乏にさらされています。基本的人権を擁護し、社会正義の実現を使命とする弁護士及び弁護士会は、最大の人権侵害である戦争をなくし、世界平和を実現することを強く希求し、今後とも法律家団体として社会に対し、様々な情報・提言等を発信していきます。
02「弁護士・弁護士会の防災力アップ!」
自然災害が発生したときに弁護士自身が被災しても、被災者支援を実行するためには、弁護士会活動を停止させるわけにもいきません。まさに、災害を「避災」する事前の準備が必要です。人命尊重を最優先にした専門家による訓練を行うことも必要です。このことは、従業員・顧客を守るための管理責任の問題でもあります。
当会では、2013年度に災害時でも弁護士会の中核的業務を継続するために必要な施策と手順を取りまとめた「業務継続計画」(BCP)を策定しました。また2020年度には、新型コロナウイルス感染症のまん延という事態を受け、従前作成していた (物理的)自然災害用のBCPとは別に、感染症まん延時対応のBCPを策定しており、2024年度に両者を統合して新たにBCPを策定しました。今後も、不断の検討を実施してまいります。また、当会は毎年、裁判所(東京高裁、東京地裁、東京家裁)、検察庁(東京高検、東京地検)、東京三会、関弁連及び法テラスによる大規模災害時の対応に関する協議会を開催し、また、会員の安否確認訓練(テスト)を毎年実施しておりますが、これらの取組みを今後も継続してまいります。加えて、当会は、他の弁護士会の知見も取り入れるべく、新潟県弁護士会、熊本県弁護士会及び兵庫県弁護士会との間で四弁護士会災害時共助協定を締結し、日頃から情報や意見の交換を行っておりますが、これをさらに発展させてまいります。
03「世代・地域・ジェンダー・業務形態などによるギャップの解消」
憲法では個人の尊厳を中核とし、個人の尊重こそ多様性の尊重を包含する重要な理念です。経済的側面において、文化的多様性を含むチームの方が、利益率や危機対応などが非常に高いことが統計的にも明らかになっています。弁護士会の活動を公正・活発化するためにもダイバーシティの観点が不可欠です。当会では、第4第二東京弁護士会男女共同参画基本計画が制定され、ワークライフバランスの実現に向けた施策や会務の効率化を目指しておりますが、2025年度は、2027年4月1日から適用される第5次第二東京弁護士会男女共同参画基本計画の策定も予定されています。今後も当会における更なる男女共同参画とジェンダー平等の推進を図ります。
60期以降の若手会員が6割以上を占める当会では、若手に期待し、若手の意見を取り入れることは、当会の維持・発展に不可欠であると考えます。私が副会長時代に担当副会長として設立に尽力したNIBEN若手フォーラムは着実に実績を積み上げています。さらに会員を増加するなど体制を強化するとともに、委員会等の会務参加がしやすい雰囲気・体制を作ること、スタートアップ等若手との親和性の高い事業とのコラボ、同フォーラムを通じて二弁の事業を若手弁護士に広報することも推進し、若手弁護士の意見を積極的に会務に反映していきます。
420万人を超える市民の司法サービスを支える弁護士会多摩支部は、支部会員への加入は任意となっており、多摩地域に事務所を構えながら支部会員でない方もいらっしゃいます。多摩地域の司法サービスを充実するためにも支部が一体となって取り組む必要があります。多摩支部会員との対話・協議を進め、支部会員全員加入に向けて尽力します。また、多摩支部本会化については、支部会員との意見交換を通じて進めてまいりたいと思います。
04さらなる課題解決に向けて
現在、組織内弁護士数は二弁全体の1割を超えています。日本組織内弁護士協会(JILA)との意見交換を通じ、二弁の研修単位や公益活動などの諸課題について、さらなる検討を進めてまいります。
当会は、100名以上の弁護士を有する大規模事務所に属する会員も多くおられます。その中で、熱心に会務活動に参加しておられる会員もいらっしゃいますが、限定的ではあります。一方、大規模事務所の活動は、弁護士の業務や活動を考えていく上で示唆に富むものもあり、当会にとっても有益な施策・情報を得るだけではなく、要望等も聴き取るなど、引き続き意見交換の機会をつくってまいります。
弁護士自治を強固にする上で、弁護士会の運営を会固有の財政で支えることは必須であり、継続して安定した財政基盤を確立する必要があります。一方、当会の基幹業務システムの開発費用や、将来における弁護士会館の大規模修繕費など、今後において高額な支出が見込まれることから、健全な財政を維持すべく、収支のバランス、繰越金の推移についても注視しつつ、これらの必要な情報を広く会員に開示して共有してまいります。
弁護士は、深い教養の保持と高い品性の陶やに努めなければなりません。目まぐるしい法制度や運用の変更、弁護士業務の領域拡大などに伴い、最新の先端的・専門的な知見を習得する必要があり、そのことは依頼者の利益になるとともに、選ばれる弁護士になるための重要なツールと考えます。今後の研修もスピーディーでタイムリーな内容の研修を提供してまいります。
会員が委員会活動に参加しやすくするためには、負担する活動内容が明確となるとともに、委員会活動の効率化を図ることや参加しやすい環境を整えることが大切です。コロナ禍を機にウェブによる委員会開催が多くの委員会で定着しましたが、こうしたIT化をはじめ、多くの会員が委員会活動に参加することができるよう、さらなる環境整備に取り組んでまいります。
マネー・ロンダリング及びテロ資金供与対策に取り組む政府間組織であるFATFによる、国際的なマネー・ロンダリング対策としての勧告への対応措置として、日弁連は依頼者の本人特定事項の確認及び記録保存との履行状況の報告書の提出を義務としました。弁護士がマネー・ロンダリング行為に関与させられないようにすることはもちろん、これを自主的に規律し、政府の介入を招くことのないよう、二弁ではマネー・ロンダリング対策室を設け、適切に義務を履行できるようさらなる周知徹底、報告書作成支援の活動に努めます。
弁護士の人権擁護などの活動を脅迫・暴力によって妨害することは断じて許されるものではありません。近時はインターネット上で誹謗中傷の被害を受ける弁護士も少なくありません。被害受けた弁護士は当会の弁護士業務妨害委員会に支援要請を行い、相談や受任事件の支援を行っております。支援弁護士にも被害が波及しないよう配慮しながら、支援体制を強化し、毅然として対応します。また、弁護士業務妨害対策の原点といえる坂本堤弁護士一家殺害事件を風化させないよう取組を進めます。
弁護士自治は、市民・社会からの高い信用をもって強固なものになります。しかし、近時弁護士の預かり金の流用などの不祥事が発生し、弁護士に対しての信頼が揺らいでおります。また、非弁業者と弁護士が提携して依頼者に損害を与えるケースが増加し、一方非弁業者の活動も巧妙化しています。市民相談窓口、紛議調停などの手続を充実させて不祥事の端緒を早期に把握し、不祥事等を未然に防止できるように対策を進めます。また、弁護士に対する啓発や警告などを通じて非弁提携を阻止します。
綱紀・懲戒は弁護士自治の中核をなすものですが、大量懲戒請求など業務妨害的な請求も散見されることから、綱紀・懲戒手続の効率化についても検討をすすめます。また、不祥事等の被害拡大を防止するため、迅速な会立件等も視野に入れ、綱紀・懲戒制度が効果的に運用されるよう努めます。さらに、紛議調停制度の周知と効率的な運営に努め、懲戒請求に至る前に、弁護士と市民・社会との信頼関係が回復されるよう努めます。
二弁は、会員数全国3位の弁護士会であり、日弁連や関弁連の活動に寄与・貢献すべき立場にあります。これまでも多くの会員が各連合会で活躍してきましたが、引き続き活躍が期待できる会員を推薦し、各連合会と連携して司法制度の充実に努めます。東京弁護士会、第一東京弁護士会とは、三会共通の課題や問題等を、意見交換を通じて連携して問題解決を図るよう連携強化に取り組んでまいります。
近時のITの発展と普及に伴って、民事司法のIT化は定着しつつあり、利便性も高まりました。民事司法のITを利用した運用はさらに拡大する一方、弁護士もその内容に精通する必要があります。全会員が民事司法のIT化に適切に対応できるよう、先進会員も含めた研修やサポート体制を充実・強化します。
また、IT化にともなう環境整備やセキュリティ対策も十分に行う必要があります。日弁連では弁護士情報セキュリティ規定が設けられ、弁護士は取扱情報のセキュリティを確保するための基本的な取扱方法を定めなければならず、事務職員との分担や権限付与、依頼者との連絡方法について体制を整えなければなりません。そのための研修、技術面でのサポートも行います。
1980年に死刑判決が確定した袴田事件は、昨年9月に再審無罪判決が言い渡され、確定しました。逮捕されてから58年以上の歳月が経過しております。えん罪は、国家による最大の人権侵害です。再審判決に長期間の日時を要したのは、わずか19条しかない現行再審法に問題があるからにほかなりません。日弁連では、2023年6月の定期弁護士大会において「えん罪被害者の迅速な救済と尊厳の回復を可能とするため、刑事再審法の速やかな改正を求める決議」を採択しており、当会も改正に向けて全力で取り組みます。
また、取調べの録音・録画制度の施行後も違法・不当な取調べが繰り返されていることは、いわゆるプレサンス事件や大川原化工機事件などからも明らかです。違法・不当な取調べを抑止するためには、取調べの録音・録画制度の対象を拡大し、全ての事件において、逮捕又は勾留されている被疑者に限らず、全ての被疑者及び参考人の取調べについて、全過程の録音・録画を義務付けるべきであり、併せて弁護人の取調べ立会権の確立が必要です。
現行法は、法律婚をする場合には夫婦同姓でなければならないとしています。しかし、それによって社会的な不利益を受ける人がいることは見過ごせません。旧姓の通称使用は日本独自の仕組みで、海外では同一人物とはみられずトラブルが発生しており、少子化・核家族化が進む中で愛着ある自らの姓を残したいと考えている人も増え、自分の姓を残すために事実婚を選ばざるを得ない人もいます。日弁連では2024年6月、「誰もが改姓するかどうかを自ら決定して婚姻できるよう、選択的夫婦別姓制度の導入を求める決議」を採択しましたが、女性の活躍やジェンダー平等の実現のためにも、当会は選択的夫婦別姓制度の導入に全力を挙げて取り組みます。
また同性婚制度についても、戸籍上の性別が同性の者同士の婚姻が認められていません。そのため、同性パートナーは、相続等の財産関係、扶養義務、健康保険など異性間の婚姻者と同等の権利が保障されていません。日弁連は2023年6月に「当事者の性別に関わりなく婚姻を可能とする立法を改めて求める会長声明」を発出しており、また札幌・東京・福岡の高裁判決で違憲判断がなされているところであり、同性同士の婚姻も人格的価値に深く関わるものであることから、現行法の改正を求めます。
2020年度より、法学部に「法曹コース」が設置され、3年の「法曹コース」と、法科大学院既修者コースの2年を合わせて、最短で5年で法学部と法科大学院を卒業することができ、法曹資格取得のための期間が大幅に短縮されました。2023年からは修了見込みの資格で在学中の法科大学院生が司法試験を受験し、合格者が出ています。他方、予備試験経由で、高校在学中の司法試験合格者も誕生しています。これらの新制度の効果や運用状況、司法試験合格者の現状について注視すると共に、中高生、大学生等に対して、法教育や広報活動等を通じ、弁護士・二弁の魅力を伝える活動を継続してまいります。さらに、多彩な人材を法曹界に集める観点から、法学部以外の出身者や社会人にも弁護士の活動に関心を持ってもらえるような活動の充実にも取り組みたいと考えています。
当時の裁判所法の改正により、新65期から70期までの修習生について給費制が廃止され、貸与制が実施されていました。上記期間に修習を受けたいわゆる「谷間世代」には当会でも会館特別会費相当額を支援金として支給し、その後、新たに司法修習生に対して修習給付金等を支給する制度が創設されましたが、「谷間世代」が負った経済的負担はなお解消されていませんし、現在の司法修習生や修習を終えて間もない若手弁護士の経済的負担の重さもなお指摘されています。司法修習生や若手弁護士が直面している困難な経済状況を改善するため、今後も法曹養成段階の経済的負担の問題について検討していきます。
当会では新規会員獲得のための方策を検討するため、令和元年度より「二弁の未来プロジェクト・チーム」(未来PT)を発足させております。司法修習生(新規登録弁護士)や未来の法曹志望者(中高生、大学生、ロースクール生)等を対象に、二弁の魅力を幅広く存分に発信するため、司法修習生等に対するセミナー開催やJILA(日本組織内弁護士協会)との交流、新入会員向けの委員会傍聴制度のオープン化などを行っています。より魅力あふれる明るい未来の法曹を目指して活動を続けて参ります。
社会・経済のグローバル化が進み、日本の弁護士会も国際的知見に学び、会員に還元する必要があります。また、国境を越えた取引も増加し、併せて発生するトラブルの予防・事後の対処などの研修も必要です。当会では、台北律師公會やシンガポール弁護士会と相互の弁護士を紹介する制度を創設し、ソウル弁護士会やパリ弁護士会等と友好協定を結んでおります。弁護士が海外進出する企業を支援する体制を整えるとともに、人材交流などによって国際化に寄与できる人材育成を図ります。
弁護士業務の拡大・発展は、基本的人権の擁護と社会正義の実現へと繋がります。弁護士の活動領域の拡大は、法の支配を社会の隅々にまでいきわたらせ、企業のガバナンス・コンプライアンスを重視する上でも重要な活動であり、立法・行政の分野においても弁護士が活躍する機会を拡大することが重要です。そのために、社外取締役・社外監査役や、議員などの立法の分野、任期付公務員などを経験された弁護士との意見交換や交流の機会を持ち、その魅力を発信していくとともに、サポート体制を推進します。
我が国のおよそ99%を中小企業が占め、法務部のある大企業とは異なり、弁護士の関与が大きなサポートになります。しかしながら、中小企業にとってまだまだ弁護士は敷居が高く、そもそも弁護士に対してどのようにアクセスするのかわからないといった状況もあります。弁護士業務センターが金融機関と連携して各種法律相談・セミナーを実施するなど中小企業のサポートをしておりますが、さらなる中小企業向けの法律相談の拡充のほか、中小企業向けの広報を充実させるなど、会員の業務拡大に向けた活動を推進します。
2026年3月30日に二弁設立100周年を迎えます。先人によって積み上げられた歴史の重みに思いを馳せながら、歴史的な記念行事に向けて、この一年、誠心誠意会務に注力する決意ですので、皆さまのご支援を賜りたく、宜しくお願い申し上げます。